未完成トリコモナス
随想録
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728   
<< February 2018 >>
Links
フィリピン、ダバオ市で日本語を学んじゃおう!
RECOMMEND
オアシス連載小説    グルマン道子
category: - | author: gie-fujita

  第44回 「アマンちゃん現る〜!」の巻    湯之町 とおる

 

2018220日(火)

 

本年度上半期・警視総監・情熱大陸賞・候補作 アマンです〜!

 

オダマキが扉を開けると幼くも可愛い女の子が立っていた。

胸に袈裟がけした長いタスキを読もうとすると、

 

ほんねんどかみはんき・けいしそうかん・じょうねつたいりくしょう・こうほさく

アマンです〜!

 

と今度はペッパー君みたいにしゃべる。

 

オダマキは何がなんだか分からないまま、しばらくアマンちゃんを見つめた。

アマンちゃんは手に一冊の本を持っていた。

「青鬼のふんどしを洗う女」。

 

「アマンちゃん!安吾好きなの〜?」

「ハイ、大好きです!」

 

青春時代、坂口安吾に傾倒私淑したオダマキはこの不思議な少女を家に招き入れた。

 

「アマンはね、地球人のセックス調査をするために火星から来たの。」

「その青鬼は?」

「アマンの教科書。メランコリアでインフォマニアックなアマン、

コレ読んで地球の男と女の色恋を勉強してるの。」

「そうなの」

「主に心理面をね」

そう言い終わるとアマンはいきなり

「わたし脱ぎます!」

といって、異星服を脱いだ。

オダマキがびっくっりしていると少女はくるりくるりと四回転して身体をさらした。

 

それはひとつの確かな眼福ではあったが、

あるべきところにあるべきものが無いことに気づいた瞬間、

オダマキはおののいた。                

 

                                                              (つづく)

comments(1) | trackbacks(0) |PAGE TOP↑ -
オアシス連載小説no.43.      グルマン道子
category: - | author: gie-fujita

         第43回「ここだけの話」の巻         湯之町 とおる          

 

2018122日(月)

 

オジさん!

お正月 お餅何個食べた?

道子は年の分だけ食べたよ〜!!!(23個)

 

オダマキは道子から送られてきたラインを読みながら、

もうそんな年になったのか、

という喜びと、

そういえば今年になってまだ餅を一個も食べてなかった、

という寂しさを共に感じて業務スーパーに向かっていた。

 

おい、元気かい?

 

この野太い声の主は?

と振り向くと

ルージュ色のボディをぴかぴかに光らせた車の窓から写楽の大首絵のような男がぬっと顔と手を出していた。

 

なんだ小池じゃないか!お前こそ元気か?

 

小池は遥かむかし、

大学時代の学生サークル「シュルレアリスム研究会」の朋友で、

ダダからシュルへと流れていく芸術思潮の歴史を一緒にひもとき、絵画、演劇、映画、音楽、文学、革命、果ては性のカテゴリーまで自由奔放に渉猟しあった同士であり、

長野の殿様の家系を出自とする小池は、田舎から送られてくる潤沢な仕送りのほとんど全てをその研究のために蕩尽した。

 

「シュルレアリスム宣言」の著者アンドレ・ブルトンの書斎に異常な執着を持った小池は、

ブルトンとまったく同じ書斎を自分の住む一軒家の一室を改装コンプリートしてつくり、

ある日の真夜中、サークル仲間13人を呼び集め、

「ルイ・アラゴンとブルトンの決裂はなぜ起きたか?

 それは単に彼らの共産党への距離感の問題だけではなかった。

 実は、ここだけの話!と言ってアラゴンがブルトンにしゃべったことを

 ブルトンがすぐにロベール・デスノスに告げたことが原因だった!!!」

という自説を夜が明けてもなお滔々と陳述した。

 

ここだけの話は、そう言って相手に釘を刺してしゃべり出した途端に、ここだけの話でなくなってしまうことを

オダマキは今までの長い人生の中で幾度も味わったが、

その教訓をいつ道子に開陳してあげようかと思案しながら餅を一度に三個ほおばった。

餅はオダマキの真っ赤なのどちんこに執拗に絡み付いて胃の腑へと落ちていく。

 

ピンポーン〜!

玄関のベルが鳴った。誰だろう?               

                                  (つづく)

comments(2) | trackbacks(0) |PAGE TOP↑ -
オアシス連載小説   グルマン道子  no.42
category: - | author: gie-fujita

 第42回「ふなっこどじょっこ」の巻     湯之町とおる

 

20171220日(水)

 

 グスタフ・アマルコルド・恋情三紀彦

 ぐすたふ・あまるこるど・れんじょうみきひこ

 

オダマキは意味があるのか無いのか自分でもよくわからないことをつぶやきながら

歩いていた。

向かっている先は三津の渡しだった。

 

漱石も子規も虚子も秋山兄弟も馴染んだ三津の渡しにいったい何の用があると言うのだろう。

携帯が鳴った。

ライン着信の音。

東京にいる畏友 網代章からだった。

 

オダマキの顔がゆるんだ。

春の訪れを感じて心は温んだ。師走の真っ只中の出来事であった。

ラインには数葉の写真が貼り付けられていた。

くっきり浮かぶ富士山。

冬の美姿。

オコゼがにらんでいる。

スペルマが泳いでいる。

 

スペルマ?

精子と思った写真はよく見るとクラゲだった。

そしてマンタ。

 

どうやら水族館にいるらしい。

アジちゃんからのラインはまるでどじょっこふなっこだ。

春まで待たなくてはその姿を見れないふなっこやどじょっこ。

 

オダマキはあることでアジちゃんと交流が途絶えていた。

長い長い付き合いの二人の間には今までも何度か反目の歴史があったが、

そのいがみ合いはほんのちょっとしたきっかけであったが故にほんのちょっとしたきっかけで修復されてきた。

 

しかし今回二人の間に生じた感情のもつれは

オダマキの心の中心部分に抵触する問題であったが故に根が深く

雪解けまでには相当の月日が必要だった。

 

オダマキは和解の時期を春と思い

長い冬を耐え抜くことを覚悟していた。

 

その矢先のライン。

まるでふなっこどじょっこが季節を間違えて現れたように思えて、

オダマキはうれしさのあまり、

さらにもまして、

なぜいま自分が三津の渡しに向かっているのか分からなくなった。                            

 

                                  (つづく)

comments(4) | trackbacks(0) |PAGE TOP↑ -
オアシス連載小説  グルマン道子   no.41
category: - | author: gie-fujita

       第41回「こんなときもある」の巻    湯之町 とおる

 

20171120日(月)

 

人間

その悩ましくも素晴らしき存在

その存在は耐えられぬほどの重さ

 

オダマキはたまに本を読む

豊かで深い本を読んだ後は言いようのない喜びに浸る。

幸福感!

人間、不幸より幸福の方が良い

 

もっと、幸せになりたくて

もっと、本の事を考えてみる。

 

そんなときは決まって国会図書館に行く。

 

何千万冊、いや、億千万冊の本の数量は圧倒的重圧だ!

 

国会図書館に行ったその日から、何日間は本に押しつぶされる夢を見る。

 

絶えがたき歓喜の夢

 

一人の人間が一生のうちに読める本の数は知れている。

オダマキは人一倍欲張りだ。

限りなき人間の欲望、その欲望は、読書に限らず、

あらゆる欲望の対象から限りなき制限を喰らい、

完全に満たされることは決してない。

 

絶望感!

オダマキが味わう絶望は限りなく曖昧だ。

絶望は曖昧ゆえにいずれうたかたの如く消えてゆく。

 

人間ドンナ感情も長くは続かない。

 

人に対する敬服と憎悪

我に対する自愛と嫌悪

感情は、いつも、宇宙に向かう旅の中で彷徨いもつれ叫ぶ。

 

                     (つづく)

comments(0) | trackbacks(0) |PAGE TOP↑ -
ヘモグロビンとはこんな映画
category: - | author: gie-fujita

プロットと呼ぼうが画列と呼ぼうが、

やれ大筋だ、やれ話の骨格だ、そういうことはひとまず置いて、

これから紡ぐ一語一句の言葉がヘモグロビン物語です。

形式は無視しました。

ただひたすらドンナ映画か?ドンナ物語か?

が分かるように書いてゆくことにしました。

 

ヘモグロビン、

現代に生きる全ての人々に捧げる嘘八百の非現実なメタファー、架空の話、

そして救い難き愛の物語。

 

あらかじめあるべきところにあるべきものがない一組の男女の物語。

一組の男女の名前はロベールとナジャ

 

ロベールは生後まもなく度の過ぎた割礼を受けた。

施したのは実の母ブリジット。

 

ブリジットは男根に深き遺恨を持つ女、

人生の大半を男根との饗宴と怨恨に費やしてきた。

あまたの男との出会いの中で、もっとも激しく愛し憎しみあった男の子を身籠ったブリジットは生まれてきた我が子のお珍をちょん切った。

中国で言う宮刑(きゅうけい)を息子に施したのだった。

(このくだりは映像ではなく、ナレーションで処理)

 

一方、ナジャは

膣の無い女としてこの世に生を受けたロキタンスキー症罹患者。

 

ロベールとナジャは苦悩の画家デスノスのモデルをすることによって運命的に出会う。

互いに惹かれあって付き合いだすロベールとナジャ、

二人がそれぞれの性的ハンディを隠しあいながらプラトニックにスピリチュアルにほっこりと逢瀬を重ねてゆく前半と、

互いの肉体的ハンデイを告白するかどうか悩む緊迫の後半とで様相をがらりと変える。

 

ある夜明け前、ロベールは狂ったようにヘモ沼の水面を激しくバットで叩きしばきあげると、そのまま、道後本館裏門でうろつき、路面電車の線路を裸足で歩いて、警察署の中に入ってゆく。

「おれを捕まえて下さい、このまま放って置くと飛んでもない事件を起こして仕舞いそうなんです。」

数人の刑事たちがロベールを取り調べてゆく。

留置する理由乏しき故、迎えに来た身元保証人の母ブリジットにロベールを返す刑事たちの中に一人だけ、

このままあいつを野放しにしておくときっと後悔することになる!

といぶかしむマッテイ刑事がいた。

 

ロベールの身辺を追い始めるマッテイ刑事。

 

ロベールの日常が描かれる。

母とのギクシャクした関係、

そしてナジャという恋人を得たものの独りになると孤独の深淵に打ち沈みながら、いつか自分はきっと人を殺めてしまうだろう

という不安に激しく襲われてゆくロベールの断腸的日常。

 

それも最も愛した人をあやめてしまうという不安に

 

ロベールのそういった精神的に不安定な日常の中で、

ナジャの救われぬデティールが、

デスノスの思い通りに絵をかけない苦悶が、

ナジャを視ていつかものにしてやろうと虎視眈々とねらうマッテイ刑事の欲望が、

ロベールの母ブリジットの息を飲むブリリアントなダンスが、

きりりとゴージャスな雰囲気をかもし出すモデルエージェント女社長カトリーヌの陰影が、

通りすがりの謎の女ナタリーのノンシャランが、

それらの登場人物たちのエピソードが絡んで描かれてゆく。

 

映画の結末はこうだ!

 

線路に滴り落ちる血

その血が落ちてくる元を探るカメラが捕らえたもの

それは先端が血でこびりついたバット

(このバットはデスノスがロベールに与えたバットであった。)

 

バットを持って裸足で線路を歩いている男はもちろんロベール

 

ロベールは警察署に入ってゆく

<取調室>

ロベール「刑事さん、刑事さんは人を本当に愛したことがありますか?」

               マッティ刑事「 ? 」

    ロベール「刑事さん、人を本当に愛するって言うのは殺してしまうことなんです!」

                                                                                                        THE END

 

(※ ロベールが誰を殺めてきたかは一切明かさない。

可能性としては、一番はナジャ、二番目は母ブリジットであるが

それは不問。

それとも劇中にまったく登場しない人たち?か。

ロベールとナジャの局所欠損症も映像では提示せず

ナレーションで観客に伝える)

 

                                         2017/10/21   GEE  FUJITA

comments(0) | trackbacks(0) |PAGE TOP↑ -
オアシス連載小説     グルマン道子  no.40
category: - | author: gie-fujita

         第40回「ブスメイク」の巻        湯之町 とおる

 

20171023日(月)

 

道子は美人だ!

美徳の不幸、悪徳の栄え、美貌の青空、神はいつも残酷で優しい。

 

産まれた場所がラブホテル、ヘソの緒を裁ちバサミで切られて血だらけになっているところを従業員に発見された。

父と母の顔を知らない孤児はその不幸を埋め合わすかのように美しい顔を授けられて生まれてきた。

道子は孤児院に預けられ、三歳のとき、運よく資産家の川島夫妻に引き取られた。

もう一度言おう!!道子は美人だ!!!

明眸皓歯(めいぼうこうし)と言う言葉は道子のためにある。

 

オダマキは何とか工面して下着代5万円を道子に送った。

五万円あれば、イタリアの高級ランジェリー・ペルラが一着買えるだろう。

 

そして一週間経った。

 

道子からお礼の手紙が届いた。

その手紙の中に一枚の写真が入っていた。

とんでもなくブスの写真だった。

オダマキはそれが道子本人の写真だとは思えなかった。

 

「おじさん!道子ね、最近ブスメイクに凝ってるの!!、なぜだと思う?」

道子を他の男に盗られたくない。

これからその美しい顔はボクだけのものだよ。

だから、僕のいないところでは誰もがそっぽを向くブスでいてほしい!!と彼氏がしつこく言うのよ。

おじさん、それってどう思う?

わたし、彼のことが大好きだから迷わずいうととおりにしたよ。

 

「私のブスメイク、まんざらでもないでしょ」(?!)

 

オダマキはブスが大好きだ!!

オダマキは道子の醜い自撮りの写真を見つめながら呼吸を荒くすると股間を大きく膨らませた。

                                                                                                    (つづく)

comments(0) | trackbacks(0) |PAGE TOP↑ -
オアシス連載小説   グルマン道子 no.39
category: - | author: gie-fujita

    第39回  「気持ちだけでいい、、、」       湯之町 とおる

 

2017925日(月)

 

オダマキの昼寝は短くて深い。

今日も夢の中で悪魔と善魔が戦った。

昼寝の時間が短いからなのだろうか、

悪魔と善魔の戦いはいつも決着がつく前に夢は覚める。

 

「オダマキさん、書留です」

郵便やさんだ。

誰からかな?

あっ、道子ちゃんからだ!なんだろう!!

 

「おじちゃん!わたし、いい人ができたんよ」

「今度デートすることになったの」

 

そうか、道子にもとうとう彼氏が出来たか、

オダマキはかって居候であった道子の近況を我が娘のことのように喜び、思わず涙ぐんだ。

 

書留の封筒の中には、イタリアの高級ランジェリーブランド “ペルラ”のカタログが入っていた。

カタログに目を奪われてオダマキは久しぶりに目がクラクラしてすでに失われし我が性春を懐かしんだ。

カタログをさらにめくってゆくと、中に白い紙が入っていた。

 

「おじちゃん!私に似合う下着選んで!!そして、買って!!!」

 

デートに着て行く勝負下着を選んで、その代金を送ってくれないか、、、

それが道子のデマンドであった。

オダマキは一瞬思った。

どこまでのどういう関係か知らないけれど、最初のデートで最後まで?いくらなんでもちょっと早すぎやしないか!と、ことのほか心配した。

心配したのはそのことだけではなかった。

選ぶのはいいが送る金がない。

 

どちらかというとその買って上げる金がない!

ということの方が大きな心配、悩みの種だった。

そしてデマンドレターの最後の一行がまたまたオダマキを悩ませた。

 

「おじちゃん!いくらでもいいよ!!気持ちだから!!!」

 

この気持ちという奴!ほど手強く厄介な言葉は無い!!

オダマキは自らの感情の歴史に照らし合わせてまたまた頭を抱え込んだ。

 

気持ちといわれたら、やはり、張り込みたくなるのが人情、

それがかなわぬ今のオダマキは、

セクシーな高級ランジェリーの写真をまぶしく感じながら底知れぬジレンマ地獄に堕ちてゆくのであった。 

 

                       (つづく)

comments(0) | trackbacks(0) |PAGE TOP↑ -
オアシス連載小説 グルマン道子   no.38
category: - | author: gie-fujita

2017823日(水)

 

38回  「シーンNo.731 空回り 頭突きスイカ」の巻

                       湯之町 とおる

 

ピンポーン 「宅配便です。スイカです。」

ドアを開けると 雲を突くような大男が立っていた。

オダマキは寝起きの寝ぼけ眼で その配達員を見ると

一気に不機嫌になった。

 

彼は思春期を迎え恋心が芽生えてからというもの

自分より背の高い人間をみるとかすかな敵意を抱いてきた。

まあ、34cmくらいなら許せる範囲、

目の前の男は30cm以上も高い!

 

男に殺意を持ってしまったオダマキは

配達員に早く俺の前からとっとと消えうせろと目配せした。

配達員はオダマキの気持ちなど分かろうはずはなく

受け取りのサインをもらうと階段を脱兎のごとく駆け下りた。

 

「おじちゃん!お元気で何よりです!」

スイカと一緒に梱包されていた手紙は道子からのものであった。

 

手紙には、たくましく生きている道子の近況が書かれていた。

 

「毎日毎日 宙ぶらりんで空回りばっかしてるけど、

 それでも生きてて楽しいよ。

 おじちゃんはどう?」

 

いま、道子は地方のインディーズ映画でかなり重要な役をもらい

この前撮影が終わったばかり、

撮影用のスイカが余ったのでスイカ好きのオダマキを思い出して送ったのであった。

 

ロケ地は四国松山の銀天街、

道子の役は深夜、誰も歩いていないアーケードで

通路に転がっていたスイカにいきなり頭突きを食らわすという役。

物語の流れからしてまったく前後の脈絡なく設定されたこのシーンを

道子は嬉々として演じた。

 

監督は道子の頭突きに何度もダメだしをした。

負けず嫌いの道子は監督のNGに大いなるパッションで応えた。

そして、結果、脳震盪を起こして救急車のお世話になった。

 

ギャラはない。

病院の治療費も自腹。

道子の人生はどこまでも空回り。

 

それでもどっこい 生きてゆく。

やがて夜明けの来る それまでは

意地で支える 夢ひとつ。

 

道子には 大きな夢があった。

                           (つづく)

comments(0) | trackbacks(0) |PAGE TOP↑ -
オアシス連載小説  グルマン道子
category: - | author: gie-fujita

     第37回「空、みたか」          湯の町  とおる

 

2017723日(日)

 

族長ススンバが、

ウレンピア!ウレンピア!!と叫びながら、

長い長い谷を

一人では到底担げない重い重い荷物を引きずって

一切成就の祝詞をぶつぶつ唱えながら

薄い光のさすほうに向かって、

ひとときの休みも取らず、

一滴の水も飲まず、

一回の瞬きもせずに進んでゆくと

道に迷ってふらふら歩いている女と遭遇した。

 

女は何を隠そうオダマキの家を衝動的に出て以来、

雨露をしのぐ宿にも困り果て、

まったく野宿同然の日々を送っていた道子その人であった。

 

道子の愛はどこにある。

 

男オダマキは婦女子放置の罪を重ね重ねて

かつての同居人であった道子の顔に

今何の変化が起こっているのか知る由も無かった。

 

出来の悪いおできを顔一杯にはびこらせ

見るも無残な道子には

もはや拾う仏も救う神もいなかった。

 

ああ無常。

                                                         (つづく)

comments(2) | trackbacks(0) |PAGE TOP↑ -
オアシス連載小説    グルマン道子 no36
category: - | author: gie-fujita

 第36回  「美味しいデスジュース」の巻

                      湯の町 とおる

 

2017622日 (木)

 

 

道子は伊豆の踊り子を尋ねて伊豆高原へ向かった。

下田の駅に降りると自販機が待っていた。

 

「コレを飲んで楽になりましょう!」

 

楽になりたかった道子は売り文句につられて

楽になれるというドリンクを買った。

千円札を入れるとお釣りは200円しか戻らなかった。

一缶800円の缶ジュース?

その名前は「ヤマモモドリンク」。

 

伊豆はヤマモモの生育する北限ではあったが

昔はどこの農家でも栽培していて収穫量も多く

かつて「ヤマモモジュース」は160円で売られていた。

 

「教訓」と「ただ一人を愛する」という花言葉を持つヤマモモは

純潔を尊ばない伊豆の風土には結局根付くことなく

いつの間にか栽培農家の数は激減していった。

 

一缶 800円の

普通に思えばバカ高い「ヤマモモドリンク」を一口飲むと

道子は急に吐き気を催した。

 

ちっとも楽にならないじゃないか!!!

 

それでも道子はだまされたとは思いたくは無かった。

生まれてこの方、

世の中の辛酸をひとりで背負い舐めてきたと自負する道子には

どんな目にあおうとそれを泰然自若として受け入れる精神が自ずと涵養されていた。

 

吐き気を催しながらも歩いて天城峠を目指す道子には

浄蓮の瀑布の音が近づいていることだけが心の救いであった。

 

丁度その頃、

道子を失ったオダマキは

マージャン仲間を家に集めてひたすら役マンだけを狙って、

相手のリーチに一発で振り込んで道子に想いを飛ばした。

 

                       (つづく)

comments(0) | trackbacks(0) |PAGE TOP↑ -
new old
SPONSORED LINKS
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
RECENT COMMENTS
RECENT TRACKBACK
LINKS
PROFILE
OTHERS
SEARCH