未完成トリコモナス
随想録
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オアシス連載小説  グルマン道子   no.41
category: - | author: gie-fujita

       第41回「こんなときもある」の巻    湯之町 とおる

 

20171120日(月)

 

人間

その悩ましくも素晴らしき存在

その存在は耐えられぬほどの重さ

 

オダマキはたまに本を読む

豊かで深い本を読んだ後は言いようのない喜びに浸る。

幸福感!

人間、不幸より幸福の方が良い

 

もっと、幸せになりたくて

もっと、本の事を考えてみる。

 

そんなときは決まって国会図書館に行く。

 

何千万冊、いや、億千万冊の本の数量は圧倒的重圧だ!

 

国会図書館に行ったその日から、何日間は本に押しつぶされる夢を見る。

 

絶えがたき歓喜の夢

 

一人の人間が一生のうちに読める本の数は知れている。

オダマキは人一倍欲張りだ。

限りなき人間の欲望、その欲望は、読書に限らず、

あらゆる欲望の対象から限りなき制限を喰らい、

完全に満たされることは決してない。

 

絶望感!

オダマキが味わう絶望は限りなく曖昧だ。

絶望は曖昧ゆえにいずれうたかたの如く消えてゆく。

 

人間ドンナ感情も長くは続かない。

 

人に対する敬服と憎悪

我に対する自愛と嫌悪

感情は、いつも、宇宙に向かう旅の中で彷徨いもつれ叫ぶ。

 

                     (つづく)

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ヘモグロビンとはこんな映画
category: - | author: gie-fujita

プロットと呼ぼうが画列と呼ぼうが、

やれ大筋だ、やれ話の骨格だ、そういうことはひとまず置いて、

これから紡ぐ一語一句の言葉がヘモグロビン物語です。

形式は無視しました。

ただひたすらドンナ映画か?ドンナ物語か?

が分かるように書いてゆくことにしました。

 

ヘモグロビン、

現代に生きる全ての人々に捧げる嘘八百の非現実なメタファー、架空の話、

そして救い難き愛の物語。

 

あらかじめあるべきところにあるべきものがない一組の男女の物語。

一組の男女の名前はロベールとナジャ

 

ロベールは生後まもなく度の過ぎた割礼を受けた。

施したのは実の母ブリジット。

 

ブリジットは男根に深き遺恨を持つ女、

人生の大半を男根との饗宴と怨恨に費やしてきた。

あまたの男との出会いの中で、もっとも激しく愛し憎しみあった男の子を身籠ったブリジットは生まれてきた我が子のお珍をちょん切った。

中国で言う宮刑(きゅうけい)を息子に施したのだった。

(このくだりは映像ではなく、ナレーションで処理)

 

一方、ナジャは

膣の無い女としてこの世に生を受けたロキタンスキー症罹患者。

 

ロベールとナジャは苦悩の画家デスノスのモデルをすることによって運命的に出会う。

互いに惹かれあって付き合いだすロベールとナジャ、

二人がそれぞれの性的ハンディを隠しあいながらプラトニックにスピリチュアルにほっこりと逢瀬を重ねてゆく前半と、

互いの肉体的ハンデイを告白するかどうか悩む緊迫の後半とで様相をがらりと変える。

 

ある夜明け前、ロベールは狂ったようにヘモ沼の水面を激しくバットで叩きしばきあげると、そのまま、道後本館裏門でうろつき、路面電車の線路を裸足で歩いて、警察署の中に入ってゆく。

「おれを捕まえて下さい、このまま放って置くと飛んでもない事件を起こして仕舞いそうなんです。」

数人の刑事たちがロベールを取り調べてゆく。

留置する理由乏しき故、迎えに来た身元保証人の母ブリジットにロベールを返す刑事たちの中に一人だけ、

このままあいつを野放しにしておくときっと後悔することになる!

といぶかしむマッテイ刑事がいた。

 

ロベールの身辺を追い始めるマッテイ刑事。

 

ロベールの日常が描かれる。

母とのギクシャクした関係、

そしてナジャという恋人を得たものの独りになると孤独の深淵に打ち沈みながら、いつか自分はきっと人を殺めてしまうだろう

という不安に激しく襲われてゆくロベールの断腸的日常。

 

それも最も愛した人をあやめてしまうという不安に

 

ロベールのそういった精神的に不安定な日常の中で、

ナジャの救われぬデティールが、

デスノスの思い通りに絵をかけない苦悶が、

ナジャを視ていつかものにしてやろうと虎視眈々とねらうマッテイ刑事の欲望が、

ロベールの母ブリジットの息を飲むブリリアントなダンスが、

きりりとゴージャスな雰囲気をかもし出すモデルエージェント女社長カトリーヌの陰影が、

通りすがりの謎の女ナタリーのノンシャランが、

それらの登場人物たちのエピソードが絡んで描かれてゆく。

 

映画の結末はこうだ!

 

線路に滴り落ちる血

その血が落ちてくる元を探るカメラが捕らえたもの

それは先端が血でこびりついたバット

(このバットはデスノスがロベールに与えたバットであった。)

 

バットを持って裸足で線路を歩いている男はもちろんロベール

 

ロベールは警察署に入ってゆく

<取調室>

ロベール「刑事さん、刑事さんは人を本当に愛したことがありますか?」

               マッティ刑事「 ? 」

    ロベール「刑事さん、人を本当に愛するって言うのは殺してしまうことなんです!」

                                                                                                        THE END

 

(※ ロベールが誰を殺めてきたかは一切明かさない。

可能性としては、一番はナジャ、二番目は母ブリジットであるが

それは不問。

それとも劇中にまったく登場しない人たち?か。

ロベールとナジャの局所欠損症も映像では提示せず

ナレーションで観客に伝える)

 

                                         2017/10/21   GEE  FUJITA

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オアシス連載小説     グルマン道子  no.40
category: - | author: gie-fujita

         第40回「ブスメイク」の巻        湯之町 とおる

 

20171023日(月)

 

道子は美人だ!

美徳の不幸、悪徳の栄え、美貌の青空、神はいつも残酷で優しい。

 

産まれた場所がラブホテル、ヘソの緒を裁ちバサミで切られて血だらけになっているところを従業員に発見された。

父と母の顔を知らない孤児はその不幸を埋め合わすかのように美しい顔を授けられて生まれてきた。

道子は孤児院に預けられ、三歳のとき、運よく資産家の川島夫妻に引き取られた。

もう一度言おう!!道子は美人だ!!!

明眸皓歯(めいぼうこうし)と言う言葉は道子のためにある。

 

オダマキは何とか工面して下着代5万円を道子に送った。

五万円あれば、イタリアの高級ランジェリー・ペルラが一着買えるだろう。

 

そして一週間経った。

 

道子からお礼の手紙が届いた。

その手紙の中に一枚の写真が入っていた。

とんでもなくブスの写真だった。

オダマキはそれが道子本人の写真だとは思えなかった。

 

「おじさん!道子ね、最近ブスメイクに凝ってるの!!、なぜだと思う?」

道子を他の男に盗られたくない。

これからその美しい顔はボクだけのものだよ。

だから、僕のいないところでは誰もがそっぽを向くブスでいてほしい!!と彼氏がしつこく言うのよ。

おじさん、それってどう思う?

わたし、彼のことが大好きだから迷わずいうととおりにしたよ。

 

「私のブスメイク、まんざらでもないでしょ」(?!)

 

オダマキはブスが大好きだ!!

オダマキは道子の醜い自撮りの写真を見つめながら呼吸を荒くすると股間を大きく膨らませた。

                                                                                                    (つづく)

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オアシス連載小説   グルマン道子 no.39
category: - | author: gie-fujita

    第39回  「気持ちだけでいい、、、」       湯之町 とおる

 

2017925日(月)

 

オダマキの昼寝は短くて深い。

今日も夢の中で悪魔と善魔が戦った。

昼寝の時間が短いからなのだろうか、

悪魔と善魔の戦いはいつも決着がつく前に夢は覚める。

 

「オダマキさん、書留です」

郵便やさんだ。

誰からかな?

あっ、道子ちゃんからだ!なんだろう!!

 

「おじちゃん!わたし、いい人ができたんよ」

「今度デートすることになったの」

 

そうか、道子にもとうとう彼氏が出来たか、

オダマキはかって居候であった道子の近況を我が娘のことのように喜び、思わず涙ぐんだ。

 

書留の封筒の中には、イタリアの高級ランジェリーブランド “ペルラ”のカタログが入っていた。

カタログに目を奪われてオダマキは久しぶりに目がクラクラしてすでに失われし我が性春を懐かしんだ。

カタログをさらにめくってゆくと、中に白い紙が入っていた。

 

「おじちゃん!私に似合う下着選んで!!そして、買って!!!」

 

デートに着て行く勝負下着を選んで、その代金を送ってくれないか、、、

それが道子のデマンドであった。

オダマキは一瞬思った。

どこまでのどういう関係か知らないけれど、最初のデートで最後まで?いくらなんでもちょっと早すぎやしないか!と、ことのほか心配した。

心配したのはそのことだけではなかった。

選ぶのはいいが送る金がない。

 

どちらかというとその買って上げる金がない!

ということの方が大きな心配、悩みの種だった。

そしてデマンドレターの最後の一行がまたまたオダマキを悩ませた。

 

「おじちゃん!いくらでもいいよ!!気持ちだから!!!」

 

この気持ちという奴!ほど手強く厄介な言葉は無い!!

オダマキは自らの感情の歴史に照らし合わせてまたまた頭を抱え込んだ。

 

気持ちといわれたら、やはり、張り込みたくなるのが人情、

それがかなわぬ今のオダマキは、

セクシーな高級ランジェリーの写真をまぶしく感じながら底知れぬジレンマ地獄に堕ちてゆくのであった。 

 

                       (つづく)

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オアシス連載小説 グルマン道子   no.38
category: - | author: gie-fujita

2017823日(水)

 

38回  「シーンNo.731 空回り 頭突きスイカ」の巻

                       湯之町 とおる

 

ピンポーン 「宅配便です。スイカです。」

ドアを開けると 雲を突くような大男が立っていた。

オダマキは寝起きの寝ぼけ眼で その配達員を見ると

一気に不機嫌になった。

 

彼は思春期を迎え恋心が芽生えてからというもの

自分より背の高い人間をみるとかすかな敵意を抱いてきた。

まあ、34cmくらいなら許せる範囲、

目の前の男は30cm以上も高い!

 

男に殺意を持ってしまったオダマキは

配達員に早く俺の前からとっとと消えうせろと目配せした。

配達員はオダマキの気持ちなど分かろうはずはなく

受け取りのサインをもらうと階段を脱兎のごとく駆け下りた。

 

「おじちゃん!お元気で何よりです!」

スイカと一緒に梱包されていた手紙は道子からのものであった。

 

手紙には、たくましく生きている道子の近況が書かれていた。

 

「毎日毎日 宙ぶらりんで空回りばっかしてるけど、

 それでも生きてて楽しいよ。

 おじちゃんはどう?」

 

いま、道子は地方のインディーズ映画でかなり重要な役をもらい

この前撮影が終わったばかり、

撮影用のスイカが余ったのでスイカ好きのオダマキを思い出して送ったのであった。

 

ロケ地は四国松山の銀天街、

道子の役は深夜、誰も歩いていないアーケードで

通路に転がっていたスイカにいきなり頭突きを食らわすという役。

物語の流れからしてまったく前後の脈絡なく設定されたこのシーンを

道子は嬉々として演じた。

 

監督は道子の頭突きに何度もダメだしをした。

負けず嫌いの道子は監督のNGに大いなるパッションで応えた。

そして、結果、脳震盪を起こして救急車のお世話になった。

 

ギャラはない。

病院の治療費も自腹。

道子の人生はどこまでも空回り。

 

それでもどっこい 生きてゆく。

やがて夜明けの来る それまでは

意地で支える 夢ひとつ。

 

道子には 大きな夢があった。

                           (つづく)

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オアシス連載小説  グルマン道子
category: - | author: gie-fujita

     第37回「空、みたか」          湯の町  とおる

 

2017723日(日)

 

族長ススンバが、

ウレンピア!ウレンピア!!と叫びながら、

長い長い谷を

一人では到底担げない重い重い荷物を引きずって

一切成就の祝詞をぶつぶつ唱えながら

薄い光のさすほうに向かって、

ひとときの休みも取らず、

一滴の水も飲まず、

一回の瞬きもせずに進んでゆくと

道に迷ってふらふら歩いている女と遭遇した。

 

女は何を隠そうオダマキの家を衝動的に出て以来、

雨露をしのぐ宿にも困り果て、

まったく野宿同然の日々を送っていた道子その人であった。

 

道子の愛はどこにある。

 

男オダマキは婦女子放置の罪を重ね重ねて

かつての同居人であった道子の顔に

今何の変化が起こっているのか知る由も無かった。

 

出来の悪いおできを顔一杯にはびこらせ

見るも無残な道子には

もはや拾う仏も救う神もいなかった。

 

ああ無常。

                                                         (つづく)

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オアシス連載小説    グルマン道子 no36
category: - | author: gie-fujita

 第36回  「美味しいデスジュース」の巻

                      湯の町 とおる

 

2017622日 (木)

 

 

道子は伊豆の踊り子を尋ねて伊豆高原へ向かった。

下田の駅に降りると自販機が待っていた。

 

「コレを飲んで楽になりましょう!」

 

楽になりたかった道子は売り文句につられて

楽になれるというドリンクを買った。

千円札を入れるとお釣りは200円しか戻らなかった。

一缶800円の缶ジュース?

その名前は「ヤマモモドリンク」。

 

伊豆はヤマモモの生育する北限ではあったが

昔はどこの農家でも栽培していて収穫量も多く

かつて「ヤマモモジュース」は160円で売られていた。

 

「教訓」と「ただ一人を愛する」という花言葉を持つヤマモモは

純潔を尊ばない伊豆の風土には結局根付くことなく

いつの間にか栽培農家の数は激減していった。

 

一缶 800円の

普通に思えばバカ高い「ヤマモモドリンク」を一口飲むと

道子は急に吐き気を催した。

 

ちっとも楽にならないじゃないか!!!

 

それでも道子はだまされたとは思いたくは無かった。

生まれてこの方、

世の中の辛酸をひとりで背負い舐めてきたと自負する道子には

どんな目にあおうとそれを泰然自若として受け入れる精神が自ずと涵養されていた。

 

吐き気を催しながらも歩いて天城峠を目指す道子には

浄蓮の瀑布の音が近づいていることだけが心の救いであった。

 

丁度その頃、

道子を失ったオダマキは

マージャン仲間を家に集めてひたすら役マンだけを狙って、

相手のリーチに一発で振り込んで道子に想いを飛ばした。

 

                       (つづく)

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オアシス連載小説    グルマン道子   no.35
category: - | author: gie-fujita

        第35回 「飯はまだか!」の巻      湯之町 とおる

 

2017524日(火)

 

さよならの日がやってきた。

さよならは

やはり別れの言葉なのだ。

それはついにでもなく突然でもなくやってくるべくしてやってきた。

 

道子は何も言わずにオダマキの家を出た。

 

家出の原因は道子にあった。

道子がオダマキに恋心を抱いたからであった。

と作者は勝手に書こうとしているが、彼女は、只いい加減な作者にそろそろ見切りを付けたかっただけなのかもしれない。

このヘタな小説から早く逃げたかったからなのかもしれない。

「グルマン」というから、毎回美味しいものを食べさせてもらえると思って、仕方なくラブホテルで生まれてやったのに、一回も上手いものを食べさせてもらえなかった。

食い物の恨みは恐ろしい!と昔から言うではないか!

 

道子がいなくなってオダマキの生活に変化があったといえば

「飯はまだか?」

といっても誰も応える者がいなくなったということくらいだろうか。

 

オダマキは思い出す。

道子がオダマキの家に転がり込んできたそもそものきっかけは道子の病気だった。

 

「私は垣根の無い人間です。」

オダマキは診察が終わると川島道子にそういった。

そして、

「あなたは不必要な垣根を持っている。それはあなたの今までの人生が苦難と不幸の連続だったので自分を守るためには必要だったのでしょう。でも、もう垣根は取り払って下さい。ここにはあなたを襲うものは誰もいないし,何もありません!」

そうオダマキに言われたその日は、その頃、寝ぐらが毎日変わるノマドライフを送っていた道子にとって生まれてこの方、世の中の善意を感じた初めての日であった。

オダマキは川島道子をあなたから道子ちゃんと呼ぶまでにたいして日にちはかからなかったが、道子がいなくなってしまった今ではそんなことはもうどうでもよくなっている。

 

「飯はまだか?」

誰からも返事は無く、ゴキブリがいっぴき羽根を大きく開いて飛んでいった。

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オアシス連載小説   グルマン道子 no34
category: - | author: gie-fujita

      第34回「いつまでもあると良いなは親とカネ」の巻き  

 

                                湯の町とおる

 

2017422日(土)

 

道子の育ての親である川崎丈太郎が死んだ。

 

道子は産みの母親を知らない。ほんとの父親も知らない。

道子が生まれた場所はラブホテルだった。

へその緒を首に巻きつけて息絶えようとする生まれたばかりの赤子を発見したのはラブホテルの従業員だった。

 

それから20数年、

道子は意味があるのか無いのかよく分からないままに人生を重ねた。

 

道子の心中を察する余り、オダマキは「鼻」について考えていた。

 

「鼻」といえば芥川であるが、

オダマキが思い巡らしている「鼻」は小津と原の鼻であった。

日本を代表する世界の小津安二郎は

映画「東京物語」(1953)を撮影しながらあることを発見して悩んだ。

主演女優の原節子の鼻と自分の鼻が良く似ていることを発見して悩んだ。

 

そのとき、小津が詠んだといわれる歌がある。

 

 燃えカスの わが身捨つるは あしたこそ 

                  もんどりうって 双六ふりだし

 

オダマキはこの歌が好きで、道子に内緒で飼っているゴキブリたちを週に一回、屋根裏部屋に集めては吟じる。

そうすると数千匹のゴキブリたちが

祭壇に供えられた千疋屋の果物の匂いを嗅いで失神する。

オダマキは目の前で累々と失神してゆくゴキブリたちを観察して、

わが身の孤独を哀しむのであった。

 

独りマッチポンプ?

 

この世で一番哀しむべき所業である独りマッチポンプを嘆くオダマキの姿を、

同じ屋根の下で暮らす道子はまだ知らない。

                                                (つづく)

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オアシス連載小説   グルマン道子   no33
category: - | author: gie-fujita

      第33回「花粉症にヘタ討つな」の巻                               

                                湯之町 とおる

 

2017322日(水)

 

メタセコイアの森の中で何を探しているのか

マスクをした少女が獣の気配を感じて振り向いた先に

赤ん坊が鼻水を垂らして泣いている。

 

ポララミン、アレロック、ジルテック、エバステル、タリオン、アレグラ、クラレチン、ザイザル、アレジオン、

この中で何が一番穏やかに効き目を現すか?

森の中でそれを知っている者は誰ひとりいなかった。

 

麻貴子の眠りは深く時間は止まっていた。

麻貴子は最近出来た道子の友達で

毎年この春先になると花粉症に苦しみ、

すると決まっていくつもの薬を町の薬局で買ってきては、アレもダメこれもだめとぶつぶつ独り言を言いながら

次から次に薬を飲んで深い眠りに入ってしまう。

そうしてメタセコイヤの森で幼い頃の自分に逢う。

 

ある日の朝、道子はオダマキに麻貴子が花粉症で寝込んでいることを話した。

 

人生下手ばかり打ってきたオダマキは、

ここぞとばかりに【甚助】という八百屋に行って

野菜を一杯買い込んで家に戻るや小刀でヘタを抜き取った。

 

なす、ぴーまん、きゅうり、とまと、かぶ、にんじんのヘタばかりがまな板の上に乗せられて

オダマキの花粉症特効薬の調理調合が始まるや、

隣町に住んでいる麻貴子の眠りはいよいよ深まっていった。

                                   (つづく)

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