| 2012.01.17 Tuesday/13:55 |
「愛の本質。 迷い道くねくね」 ――「芸者東京」訪問記―― |
category: - | author: gie-fujita |
2012年1月13日(金)
乾燥日が続いている。
カンソウと言えば幕末の鍋島藩主、閑叟(かんそう)。
アームストロング砲が空腹万才の祝砲をぶっ放す。
空腹もいいがおしめりが欲しい
などと思っていると心友・出馬康成から電話が入った。
東大出のモバゲー会社「芸者東京」社長 田中泰生のところへ一緒に行かないか
との誘いであった。
出馬をオジキと呼ぶ泰生はかつて俺という存在を最も容赦なく言葉でえぐった若者であり、
それ故、
泰生に「死ね!」といわれれば殉ずる気持は今も変わらない。
あれから何年たったのだろう。
三四郎池で愛の本質について語り合った日を懐かしむ。
久し振りの再会を前にまずは腹ごしらえだ。
牛どん¥240.所持金ぴったり丁度いい。
「進化する味」の宣伝文句に釣られてか
松屋は混んでいた。
席に座ってチケットを渡す。
すると隣の客が席を立った。
カウンターの上には白菜の漬けものがまったく手をつけられず
そっくり小鉢の中に残っていた。
漬けもの食う人食わぬ人、
世の中さまざまだ。
「名もなく貧しく美しく」の松山善三は漬けものが大嫌いであった。
大女優高峰秀子は松山のプロポーズを受けて結婚するが
夫の漬けもの嫌いをあとで知り、
大変困ったという。
デコちゃん、漬けものは嫌いというよりむしろ好きな方であった。
名もなく貧しく醜い私はというと
漬けもの大好き、
特に白菜の漬けものには目がない。
私は隣の客が食べ残したお漬けものを横目でじっと凝視、
よだれを垂らしてすきをうかがった。
大勢の客をさばく二人の店員は大いそがし。
片付ける前に片付ける。
一度ハシを着ければ二度も三度も平気だった。
はたして味の進化はあったのかよくわからないまま、
店を出るとさっき隣りにいた客が手をひらいてたちふさがった。
「漬けもの代、50円。」
と云われ、
私はあっけにとられた。
払わなければ無銭飲食で警察につき出すとまで云われ、
その男が無性に好きになったが
生憎金もなければ時間もない。
夜8時半、
出馬の待つ本郷三丁目へ、
まとわりつく男を振りきって急いだ。
「芸者東京」はフットサルができるほど広かった。
社内モードはちろりん村かホビット村か、
ありらこちらにケガレなき若者たちがたむろして
大ヒットゲーム「おみせやさん」の次の着想に花を咲かせていた。
堅苦しい朝礼も社是もなさそうな和やかな雰囲気にすっかりくつろいでいると一人の若い女が近づいてきて
「私の悩みを聞いてくれますか」。
早穂(さほ)という人間加湿器のような肌のみずみずしいその女を前にして、
思わず「俺の悩みも訊いてくれ。」
と私は叫んだ。
話が佳境に入ると思ったのか
泰生社長は二人の社員を呼んだ。
一人は口もとが井上ひさしそっくりの小橋ダイスケ。
もう一人は南方熊楠のような眼をした森テツアキ。
それから何をしゃべって、何を聞いたか、
まったく覚えていない。
何故だろうか?
またしても昔の女との佳き日々を想い出し、
迷い道くねくねと「神々の黄昏」にうっとり耳を傾けていた。
泰生よ、
早穂よ、
ダイスケよ、
テツアキよ、
それに「地獄の黙示録」について熱く語っていた若者たちよ、
ありがとう!!
折角もらった名刺がない。
置き忘れたのかも
と別れ際出馬に告げると心友は
にっこり笑って闇の中の光となった。
